目標設定の難しさ(平和学習に関する科研)

長崎で,「絶対に取り組まない」と決めていた研究テーマとして,平和学習があった。長崎にやってくると,原爆のこと,平和のことなどのニュースに触れる機会が実に多い。ただし,私のような外部から来た人間は,安易にこういうことをテーマにすべきではないと考えていた。今も,そう考えている。
しかし,昨年度転機が訪れた。藤木先生を代表者とする科研費「逆拡張現実感を用いた体験し伝え共有する活動を組織する平和学習に関する総合的研究」が採択されたからである。誘われたのは藤木先生,しかも藤木先生ご自身が長崎出身ということもあり,お引き受けすることになった(他の方だったら断ったと思う)。この科研では,VRコンテンツを生かしながら,平和学習を進める実践研究で,私はそれを支援するようなデジタル教科書の開発に関わることになっている。
正直言って,遅々として進まない。その理由は,目標設定の難しさにある(おそらく態度目標であることは理解しているが)。原爆のことを学べばよいのか?平和について願うのはどういうことか?行動目標を設定できるか?悲惨さを知ることを学べばよいか?そもそも資料がないのでは?もう年月が進みすぎて,何を取り上げても現実感がないのでは?そもそもみんなが納得できるような目標設定や教材開発など無理なのでは?など,考えることが多数あった。しかし,少し整理できた部分もあるし,一歩前進したと思っておきたい。引き続き,議論を進めたいと思う。
こういうこともあり,昨年度から原爆資料館や平和祈念館を訪問したり,学生と一緒に資料にあたったりしている。昨年度は東大の池尻先生にお越しいただき,ストーリー教材の開発についてもうかがった。今,以下の書籍を手元に置き,読んでいるところだ。

原子雲の下に生きて―長崎の子供らの手記 (アルバ文庫)

原子雲の下に生きて―長崎の子供らの手記 (アルバ文庫)

小さい子の手記になっているので,読もうと思えばすぐに読めるのであるが,思うところが多すぎてなかなか読み進めることができずにいる。プロジェクトに関わりながら,私も学習をしている。