対話劇でコミュニケーション能力育成

授業終了後,佐世保へ。東明中学校というところへ行った。佐世保の中心部からは車で15分くらいだろうか。回りには田園風景が広がっていた。
授業は中学校2年生の対話劇。井上ひさし氏の教科書教材を用いた授業であった。ストーリーは朝生徒同士が話していて,そこに転校生を連れた先生が入ってくる。簡単な紹介と質疑を済ませた後,先生は職員室に戻る。その後,生徒同士の会話が繰り広げられる。それぞれの会話において言葉遣いなどのモードが異なる。それらに注意しながら各グループで劇の詳細をつめていく。本日は作った劇の発表であった。
授業者の先生は冒頭に劇における発言の内容の視点,聞く側の態度(それは見た目だけではなくて,どのような点を評価するか)についてきっちりと指導をしていた。こうした確かな指導は軽視されがちだけれど重要だと思う。その指導に活かされていたのは評価シート。この評価シートは授業のねらいそのものにもつながっている。それには4つの視点が挙がっていた。

  1. 相手の思いや話す目的にあった話題づくりの工夫
  2. 話題に沿った対話の工夫
  3. 場に応じたことば遣いの工夫
  4. 対話をよりよくするための言葉遣いの工夫

対話劇はいわゆるロールプレイのようなものだ。実際には生徒は演じているわけだけれども,それは自分たちの日常生活に近いものである。この場面設定がポイントだろう。ちなみに,練習時,電車での対話が紹介されたらしいが,普段電車に乗らないこの中学の生徒に対してはあまりピンと来なかったそうだ。
それともうひとつは役柄等にある程度の制限を設けないと,ただ劇を演じているだけで,本題からはそれてしまう可能性があるんではないかということも感じた。また,都合のいいように台本を作る可能性もある。今回の場合,「転校生は引っ込み思案」のような性格を設定しておけば,何とかして相手との対話を進めようと話しかけるほうは工夫を凝らした対話を見せる台本をより書こうとするのではないかと思う。
今日はコミュニケーション能力育成に関する対話劇の可能性を見たような気がする。各学年でチャレンジした場合,どのような力を狙うことができるのか,そういうところから発達段階を吟味しても良いように思う。
該当学年ではあまり重視されない教材であるが,現在の生徒の実情を考えて,必ずやってみたかった,という先生の発言が印象に残った。