実践力をつける

本年度,教員養成の大きな議論となるトピックのひとつに教職大学院制度の創設というのがある。ここでのキーワードは「実践力」だと思う。たとえば,確かな「実践力」をつけた新人の先生を送り出したり,「実践力」を指導できるスクールリーダーの養成などがあげられるだろう。
ところがこの「実践力」(「実践的な指導力」という言葉が文科省では書かれているが),イマイチ良くわからないのは私だけだろうか。培うための方法として,現場での事例研究、模擬授業、授業観察・分析、ロールプレーイング,というのが教育方法として挙げられているが,それで「実践力」はつくのだろうか。もちろん,ある程度のものはつくのだろうけれども。
経験だけに委ねる方法はもちろんナンセンスだから,それに対する工夫が必要だろう。となると,自身が「実践的な研究者」となり,自分の視点を構築し,それに対する評価を継続的に行っていくようなあり方が必要だと思う。
となると,こうした教職大学院でのカリキュラムは,実践的な方法はとるものの,研究者の視点を持って,分析や開発をするということが望まれるであろう。授業も実践的なものの中にやりながら取り入れるのではなくて,実践のノウハウだけでもなくて,正面を切って,授業研究の方法に関する授業を取り入れていかねばなるまい。そこでは基本的なアンケートの方法から,量的なもの,個別事例の研究が多いから質的研究方法もある程度心得る必要があると思う。このような視点が教職大学院のカリキュラムなどには含まれているだろうか。
現場での実践を見てみると,「仮説」という言葉を用いるのに,曖昧であるとか,検証するための要素が不明確であったりとか,結果が想定されていないなど,「何のための調査かね」と生意気ながら思ったりする。本当にちゃんとやればもっと明らかにできそうな内容の調査でも,結局調査を実施するだけに終わってしまっていることも少なくない。実にもったいない。
ただノウハウとして「できる」だけではなく,実践的な研究者として「できる」ことを「実践力」という言葉に期待したい。