身につけたい力(その2)基本的なリサーチ能力

その1で終わってしまわないように,その2について触れたい。
前回あげたものは特に順序性はないのだけれど,基本的なリサーチ能力というのは,重要ではないかと思う。大学で学ぶ人はほとんど研究者とはならない。しかし,それでも卒業研究の類が要求されるのは,このような能力が必要だと考えられているからだろうと思う。
まず,「何を明らかにしたいのか」という目的を立てる必要がある。そして,それを実現させるための方法を考え,実行する。出てきた結果を記述し,それに対する考察を述べる。最後に今後の課題を書く。これは一般的な手続きだ。
ここで,大きく何が要求されているのかといえば,話の筋を通すことと情報活用能力だろう。
前者は何か実行する際にもこうした思考が要求される。実現不可能な案や考えをたてたとしても,それは社会では無駄なのである。実現,実行可能な筋の通ったプランを継続的に立てていくことが重要である。
後者は,上のように筋を通すために背景となる情報を調べる。また,基礎データを収集したり,それを分析する能力も問われる。わかりやすい形で表現することも必要だろう。
一般的に大学で行う卒業研究は,テーマ自体はその後役に立たないことが多いかもしれない。ただ,こうした能力は社会でも問われるわけで,大学や大学教員の文脈の中で,基本的なリサーチ能力が育てられるべきだろうと思う(もちろん,テーマ自体が役に立てばそれは素晴らしいことだ)。
したがって,私は卒業論文の指導時は,上記のことについて指導をしているつもりである。半年経てば,それがある程度分かってきて,他の活動においても応用を利かせることができる学生がいる(たとえば,他のプレゼンテーション活動などで)。一方,それが見えない学生もいる。直接的に指導するだけではなく,自身で感じてものにしていくことが重要あると感じている。これをどう気付かせるかが難しいところである。
教職大学院では,「実践研究報告書」と題し,教育実践が重視されている。もし教育実践のみが重視され,先のような論理的な要素が薄れるのだとしたら,それは心配である。私はそんなことはないと思っているが。ちゃんとした教育実践というのは筋が通っている。そうしたアウトプットの力も身につけてほしいと思う。