中学校におけるICTの活用ーふたつの学校に注目

校内研究一般もそうであるが,ICT活用の教育実践研究に関しても,中学校でどのように進めていくかは大きな課題である。
この中で,私の訪問したふたつの中学校がそれをテーマに取り組んでいる。
ひとつめは,長崎県長与町立長与中学校。ここは,かつては電子黒板の県内のモデル校で,全クラスに電子黒板が配備されている。
導入の際一度うかがったが,再び訪問することになった。この度,県教育センターから本多先生が教頭に着任されたこともあり,
再び訪問をすることになった。6月26日に英語の習熟度授業,数学が公開され,授業後の検討会が行われた。
本校は,ICT活用と,長崎県の推進する「教えて考えさせる授業」をキーワードに実践研究を進めている。
ICT活用はシンプルで無理なく,定着していると感じた。また,「苦手だ」とおっしゃる先生も充分活用されていた。4月から,本校にやってきた先生も積極的にチャレンジされている。デジタル教科書も豊富にあり,長与町の積極的に姿勢に驚いた。
研究主任の小宮先生が,ワークショップ型の事後研究会に取り組みたいということで,本多教頭先生のコーディネートの元実施された。各先生方が積極的に議論をされていた点が印象的であった。
細かい点で言えば,考えないといけない点があるかもしれないが,学校研究として多くの良い点が目立った。ひとつのモデルケースとして,今後に注目したい。
ふたつめの学校は,大阪府高槻市立芝谷中学校。同校は本年度から2年間,パナソニック教育財団の特別研究指定校として,「ICTを活用した活用型授業の実践事例集および活用マニュアルの開発」に取り組んでいる。私は財団指定の研究アドバイザーを仰せつかっている。
7月6日,第1回目の研究会が開かれた。数学の習熟度別学習の授業が公開され,どちらも若手の先生が取り組まれていた。この日のために教科内で議論を重ねての実践であった。特に,このようなテーマでは,ICTの活用で頭にいっぱいになってしまう中で,授業の本質として欠かせないことは何かについて,議論をしてきたように読み取った。
事後研究会においては,初回にもかかわらず,授業者およびこれまでも指導に入られている関西大学の黒上先生らとともに,シンポジウム形式で行われた。あまりにも筋書きがなく立ち振舞いに困ったが,用意してきたものの中から,校内の先生がどうやって同じ方向を向いて実践を進めていけるのか,授業設計とICTの活用という視点から幾つかの視点から提供した。
同校には,今後iPadも入ってきて,これを活用した教育実践への関心が高いが,

  • まずはシンプルかつ典型的なICT活用を蓄積していくこと
  • 活用型授業に関する理論的背景をある程度固めること
  • 授業を実施した教科は授業を再設計したり,再実践を別教師がしてみること
  • 他の教科の授業研究会での知見を,自教科の授業に取り入れてみること
  • 基本的な授業技術の見直し

などが課題だと思った。
この両校では,今後授業の公開が計画されることになるだろう。中学校の授業研究やICT活用をどうすすめるか,ひとつのケーススタディとして注目することをおすすめしたい。