中橋雄(2014)メディア・リテラシー論(北樹出版)

著者の中橋さんは,関西大学の同じ研究室にかつて所属をしており,今も仕事で一緒になる機会も多い。そういう縁もあり,この度書籍を頂いた。ありがとうございます。
本書は,メディア・リテラシーの概念が説明されており,それを育む方法を考えるための事例が豊富に提供されている。話題提供だけではなく,読者に考えさせようとしているところが,著者らしいと思う。メディア・リテラシー研究の系譜や日本国内外の動向も理解できるようになっていることから,今後メディア・リテラシーを考えるための必須図書になるだろうと思う。
著者の博士論文がベースとなっているが,この10年間に取り組んで来た研究などの成果も大いに盛り込まれている。特にこの10年はソーシャルメディアの進展が著しいので,その点が大幅にアップグレードされた内容であるといえよう。理論的にアップグレードするだけではなく,著者が取り組んできた研究プロジェクト,フィンランドへの訪問などの成果もまとめられている。加えて,学校教育における事例も豊富である。ひとつの集大成であると読み取った。
本書を読んで,「何とか論」として,1冊の本をまとめることに研究者個人として興味をもった(これまではあまりなかった)。私も3回ぐらい授業をしたり,1,2章ぐらいであれば執筆できるかもしれないが,やはりここまではまとめられるはずもない。プロフェッショナルな仕事だと思う。中橋さんの仕事はどれも自分の研究の視点から筋が通っている。本書に目を通していて,自分の不甲斐なさを反省した。

メディア・リテラシー論

メディア・リテラシー論