協働学習とICT(学習情報研究11月号)

学習情報研究という雑誌が奇数月に発行されている。学校現場におけるICT活用や情報教育の実践がたくさん載せられている雑誌である。私もこれまで,数度原稿を掲載させていただいた。
本誌の11月号においては,2本立ての特集のうち,ひとつが「協働学習とICT」となっており,私がコーディネータとして取りまとめをさせていただいた。といっても,執筆者とそのテーマを決めただけだが。冒頭にもヒトコト書かせていただいた。
私は,フューチャースクール事業に関わっているわけでもないので,なぜ自分が・・・という思いがあったのだけれど,逆にそれに囚われることなく,メンバーを選定することができた。「これも協働学習なの?」と言われる事例もあるかもしれないけれど,特定の型が明確になっているものではないので,色々と紹介できれば良いと考えた。私が執筆したページの一部から,本特集号の概要を以下に再掲するので,興味のある方は手に入れていただければと思う。
私の冒頭ページはさておき,数多くの実践が掲載され,かつそれを内垣戸さん@福山大学,益川さん@静岡大学の研究者コンビで挟み,理論と実践の往復を心がけたが,編成としては良かったのではないかと思っている。
この特集テーマのもとご執筆いただいた皆様,またこのお仕事を紹介してくださり,かつ執筆者編成の際アドバイスをくださった中川先生@放送大学に感謝申し上げます。
私は関わっていないが,もうひとつの特集「デジタル教材」もなかなか興味深い論考が並んでいる。これもまた読んだほうが良いだろう。

まず,フューチャースクール推進事業に関わる内垣戸が,ICTと協働学習の関係について,より詳細にまとめている。ここで,国内の現在の最新動向を読み取ることができる。あわせて同氏による,本誌9月号の論文も参考にしたい。
次に,電子黒板等の大型ディスプレイを活用しての子ども同士の話し合いなど,「協働学習はじめの一歩」として進められるような事例を佐藤(国語)・東(理科)・増坪(道徳)が執筆している。特に佐藤と東の事例は,「国内のICT教育活用好事例の収集・普及・促進に関する調査研究」(http://www.eduict.jp/movies/)においても映像で紹介されているので,あわせて参考にしていただきたい。
その後,パソコンでソフトウェアを利用して,進めるタイプの協同学習として石堂が執筆している。教科学習だけではなく,総合的な学習で時間をかけて議論し,まとめていくのも協働学習で期待されるひとつのスタイルであろう。
この次に,やはり多くの読者が気になる,タブレットPCの活用事例について,山中・永野・則元がその学習環境や事例を紹介している。多くの読者にとっては少し先の世界になる話かもしれないが,その先行事例として学ぶところは多い。永野のまとめるように,こういう協働学習が高等学校に入ってきているのも,ひとつの特徴であろう。
さらに,前多・中島・清水が交流学習の事例を紹介している。2000年ごろに全国的に盛り上がったインターネットを活用した遠隔交流学習は,ここ10年,下火ながら継続されてきた。インフラも充実し,協働学習が強調される現在にあって,今後再び注目されると考え,事例紹介をお願いした。
最後に,学習科学の視点から協働学習に関する研究を進め,大学院教育では現職教員への指導にもあたる益川に,協働学習とICT活用において留意しなければいけない原則についてまとめてもらった。