明らかに専門外の授業を担当せよと言われて

月曜日の2時間目に行われる「教職実践演習」,これは僕にとっては非常に困難な授業である。この授業は4年生のまもなく教員採用試験を受けようとする学生である。
以下の3つを授業のねらいとして,3時間の授業を作ってくれとのこと。「教師になろうとする使命感」を育てるというのだという。

  • 教育に対する使命感や情熱を持ち、常に子どもから学び、共に成長しようとする姿勢が身に付いている。
  • 高い倫理観と規範意識、困難に立ち向かう強い意志を持ち、自己の職責を果たすことができる。
  • 子どもの成長や安全、健康を第一に考え、適切に行動することができる。

メンバーは僕を入れて4名。しかもこのパートの実施責任者として任命された。僕の専門は教育方法や情報教育である。僕は教職大学院的に言えば「研究者教員」であり,初等・中等教育における学校教師としての経験は全くない。しかも,先の条件を除き,ほぼ「丸投げ」の状態で僕のところへやって来た(こういうリレー担当というのは,おそらく,国立大学にはよくあるパターンである)。
もしこれを読んでいる大学教員の方で「担当してください」と言われたら,どうしますか?引き受けますか?断りますか?
僕は引き受けることにした。これからの大学教員は,想定していない仕事を引き受ける場面が多々出てくる。断るのは簡単だと思うけれど,こういう困難な場面に出会うことにより,また教員としての成長も促されると考えたから(だろうと今では判断している)。そもそもこんなことを専門としている教員もまたいないのである。この授業を迷うことなく出来る人がいたとすれば教えてほしい。
僕は責任者として,4名で話し合いながら,授業を設計・実施し,現在2時間目を終えた。もちろん課題も多いのだけれど,実際にやってみると,他の先生の考えや学生が自分の想定以上にしっかりと授業に取り組んでくれる学生の姿に接することができ,驚きや学びがある。
僕のもともとの研究のルーツは「総合的な学習の時間」である。これが始まったとき,手を引きたいと思った教師は数知れずいた一方,その可能性を見出しながら取り組む教師もたくさんいた。後者の人は,今この状況の中でも形を変えながらより充実した実践研究に取り組んでおられる。情報教育や教育方法としてのICT活用に取り組まれている方も同じである。校種は違うが,僕はどちらのタイプの教員になりたいかといえば,「前向きに取り組む」教員になりたい。
ただ,引き受けているばかりではよりよい方向には進まない。終了後は,実施の全体責任者に言うべきことをきっちりと述べるつもりにはしている。授業終了時には,この授業の内容もここで公開することにしたい。